30年遅れの映画日誌・番外 幻の曲馬館レコードをふたたび聴く
1
芝居は空中に消えていくものだ。だから、今の瞬間のおれたちを見てくれ。
――何度となく役者からそう聞かされた言葉だ。
芝居公演とはべつにレコード盤『夢魔と狂騒』が制作されたのは、やはり、記録にとどめておこうという方向の模索だった。それは、機関紙『曲馬館通信』とは別個の情宣活動だったといえる。
四畳半的な環境で音量をしぼってこのアルバムを聴いても、芝居の「感動」はよみがえらない。わずかに、その「記憶」それのみが回復してくるにすぎない。初めてこの盤によって曲馬館という存在を知る者の脳髄にどう響くのか。それはわからない。想像したくもない。
1979年の冬に保谷の稽古場(木造藁ぶき)が全焼した。翌日、焼け跡に行ったさい、レコード盤の在庫が融解した残骸を見つけて、胸を突かれた。「まだ残っていたのか」と想うと同時に、しばらく前まで半年ほど稽古場で寝起きしていたにもかかわらず、それが在ることを気にもとめなかった事実に思いあたったのだ。
その感傷は、焼け跡に立ち尽くす無残さをさらに募らせて止めどなかった。
近年、CDで復刻されたことは知っているが、購入はしなかった。
ここにデジタル化した曲は、ほとんどアルバムのなかのソロ。全21タイトルの半分にもみたない。ソロ曲といっても、千代次、美希、百合ら女優のものは、結果的に外れてしまった。
泪橋エレジー
詞 翠羅臼 曲&ボーカル 桜井大造
Across the Grief ST.mp3
サーカスの唄'74
詞 中原中也 曲 桜井大造 ボーカル 大谷蛮天門
Ballad of the Circus'74.mp3
(レコード盤の針飛びがそのまま。ごめん)