30年遅れの映画日誌・番外 幻の曲馬館レコードをふたたび聴く 3
『地獄の天使』は、最初の東京公演で、主役の二人が相次いで重傷を負い、以降の日程もいったん白紙にもどりかけたことがある。
クライマックスに車を炎上させる見せ場は、京大西部講堂で、いわば偶然に実現した。セイブのメンバーが愛用の「軽」を廃車にするという。そこから「ほたらその汚いNコロ、芝居のなかで燃やしてまえ」と飛躍した。
炎上といっても、火炎瓶を叩きつけ、「劇中」で炎につつまれるシーンを観せるだけだ。
旅公演の自然な勢いで「劇作品」がエスカレートしていくのは、こんなふうに通例だった。西部講堂公演以降、自動車の炎上は定番のシーン(バイカーがテントの周囲を「爆走」する設定も加わった)となる。
数カ月の後、それらのエスカレートの質が、集団の存続をゆるがすような原理的な批判にさらされることになろうとは?
炎の舞踏会
詞 翠羅臼 曲 中進一 ボーカル 鬼河原屍
Burning Dance.mp3
雨の降る品川駅
詞 なかの・しげはる 曲&ボーカル 桜井大造
Rain Fall at S Station 1.mp3
燃ゆる難破船
原詞 アルチュール・ランボー 曲 夏稲明 唄 曲馬館
Burning Castaway.mp3
(最後の二曲は『海峡伝説――道化と鞦韆(ブランコ)』の劇中歌。オリジナル盤では連続しているが、ここで分離したのは、ファイル容量の問題から。深い意味はない)。
おれが一番好きなのは『道化と鞦韆』なのだろう。