ジャック・ニコルソンの『ボーダー』

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。

 1983年6月8日水曜 雨
 トニー・リチャードソン『ボーダー』

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 新宿

 タイトルのとおり、国境警備隊と不法入国者〈ウェットバック〉の話。ところが監督も主演スターも完全なミスキャスト。そこがオモシロイとかいう余裕の鑑賞はできなかった。
 正義派の警備隊員がメキシコ人の少女同情的な恋心をいだき……。そこからアクションが炸裂していくはずなんだが、演出はウォルター・ヒルとかウィリア
ム・フリードキンとかじゃなくて、『長距離ランナーの孤独』の人なんだから。
 それに、ジャック・ニコルソンだ。この人には肌の黒い少女を淫猥な目つきで見
るタフガイはぴったりでも、正義派は絶対に似合わない。というか正義派だけは似合わない。
 国境の外へ逃げたと思ったらまだ内にとどまっていたと気づくような、へんに間の悪い映画であった。

 ライ・クーダーのテーマソング『アクロス・ザ・ボーダーライン』の余韻だけが、瞑い街にまでずっと寄り添ってきた。
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