2023.06.10 『西部番外地』 1970 MACHO CALLAHAN
南北戦争の時代。北軍の捕虜収容所から脱獄した男デヴィッド・ジャンセン(仇名はマッチョ)。相棒のメキシコ男ペドロ・アルメンダリス・Jrとともに、自分を騙したリー・J・コッブを捜す旅に出る。その途上、新婚の若い男デヴィッド・キャラダインを、シャンパン一瓶をめぐって、撃ち殺してしまう。その場は、正当防衛でおさめるが、若妻ジーン・セバーグは復讐を誓い、マッチョに賞金をかける。彼女が最初に頼ったのは、宿敵のコップだった。
ジャンセンとコップとの宿縁がメインの逃亡劇になるかと思ったら、二人はあっさり出会って対決し、宿敵は退場(どうもわかりにくい展開だ)してしまう。セバーグは次に、酒場の成金男ジェームズ・ブースを頼るが、そこにマッチョと相棒が偶然その酒場に入ってくる(どうもお手軽な展開すぎる)。若者ボー・ホプキンスを使ってマッチョを捕らえようとするが、酒場は大乱闘となって相手を逃してしまう。
セバーグは単身で復讐相手を追っていく……。
追う者と追われる者は、奇妙な同行の「旅」をともにする。さて、そこからが、「どうして、こんな話になってしまうの?」の連続で……。
逃亡者・相棒・復讐者が絡み合う心理劇のようなややこしい展開。『明日に向って撃て!』にならったふうなところもあるが。
演じるのが、「逃亡者」ジャンセンと「ペルーの鳥」セバーグだからか。ストーリーを掴もうとするこちらまで意味不明に感染する。
殺し合いの果てに、愛し合うことになる二人! なんと、これは、『片眼のジャック』と同種の、ひたすら神経衰弱ぎりぎり番外地ウエスタンの記念碑的作品になるしかなかったようだ。
冒頭の収容所暴動のスペクタクルは、純然たるマカロニ風。こんな結末になるとは思ってもみなかった。いや、話にはつづきがあって、愛し合う二人が群がる賞金稼ぎたちに追いつめられて、やっと幕切れとなる。
2023.06.06 『青い棘』 2004 WAS NUTZT DIE LIEBE IN GEDANKEN
1927年のベルリンを舞台に、思春期の繊細で多感な青年2人が、愛をめぐる思い込みを危険なほどに純化させ破滅へと向かうさまをノスタルジックかつデカダンなタッチで描く青春ドラマ。当時のドイツで“シュテークリッツ校の悲劇”と呼ばれセンセーションを巻き起こした実際の事件を映画化。主演は「グッバイ、レーニン!」のダニエル・ブリュール。
1927年、ドイツ・ベルリン。試験を間近に控えた寄宿学校の最上級生パウル・クランツとギュンター・シェラー。労働者階級出身で詩を愛する内向的なパウルに対し、上流階級育ちのギュンターは向こう見ずで高慢な自信家。対照的ながら、なぜか気が合う2人。彼らは週末を郊外にあるシェラー家の別荘で過ごすことに。パウルはそこで16歳になるギュンターの妹ヒルデと出会い、たちまち彼女の虜になってしまう。しかし、奔放な彼女にはハンスという恋人がいた。そして、そのハンスはギュンターのかつての恋人でもあったのだ。ーーallcinema.onlineより
2023.06.05 『リスボンに誘われて』 2013 NIGHT TRAIN TO LISBON
ドイツ / スイス / ポルトガル
パスカル・メルシエの世界的ベストセラー『リスボンへの夜行列車』を「ペレ」「愛の風景」の名匠ビレ・アウグスト監督が映画化したミステリー・ドラマ。退屈な人生を送る高校教師が、一冊の本との偶然の出会いをきっかけに、作者の素顔を探るべくリスボンの街を旅するさまと、主人公が解き明かしていく作者の波乱の人生を哀愁あふれる筆致で綴る。主演は「運命の逆転」のジェレミー・アイアンズ、共演にジャック・ヒューストン、メラニー・ロラン。
スイスの高校で古典文献学を教える教師ライムント・グレゴリウス。5年前に離婚して以来、孤独で単調な毎日を送っていた。ある日彼は、橋から飛び降りようとする女性を助ける。しかし彼女はすぐに行方をくらまし、ライムントは彼女が残した本に挟まれていたリスボン行きの切符を届けようと駅へ向かう。しかし女性の姿はなく、ライムントは衝動的に夜行列車に飛び乗ってしまう。そして車中でその本を読み心奪われたライムントは、リスボンに到着するや作者アマデウを訪ねる。しかし、アマデウは若くして亡くなっていた。やがて彼を知る人々を訪ね歩くライムントは、独裁政権下のポルトガルで反体制運動と情熱的な恋に揺れたアマデウの濃密な人生を明らかにしていくのだったが…。ーーallcinema.onlineより
明らかにされる、反ファシズム抵抗運動の過去。シャーロット・ランプリング、トム・コートネイ、クリストファー・リー、ブルーノ・ガンツ、レナ・オリンなどが現われて(捜しだされて)悔恨を語っていく。だが、残念ながら、どれも深みがなく、陳腐だ。これは、最後に悲劇のヒロイン(スペインに逃げた)が出てきた場面で、薄っぺらさの総仕上げになる。いや、ミステリ・ロマンとしてはこの程度の甘い味つけでいいってことか。
一冊の本が小道具になっているところは、カルロス・ルイス・サフォンの「忘れられた本の墓場」シリーズを想いおこさせ、期待したが、原作そのものがサフォンの劣化・俗流版なのだろうか。あるいは、異質かもしれないが、探して読みたいとまでは迫ってこない。ギヨーム・ミュッソに近いようだ。いや、ミュッソのほうが後出しか。
往年のスターを豪華に揃え、ポルトガルの風景も美しい。文句をつけるにしのびないけれど……。
アイアンズが海に面したホテルの窓辺にたたずむシーン、一瞬、あれはタネール映画『白い町で』のなか、ブルーノ・ガンツが魅せた横顔の「引用」なのだった。