2026.10.12 『ミルドレッド・ピアース』 1945
MILDRED PIERCE
別題 『深夜の銃声・偽りの結婚』
監督 マイケル・カーティス
出演 ジョーン・クロフォード
原作 ジェームズ・M・ケイン
脚本 ロナルド・マクドゥガル


深夜の銃声数発。男の死体。
容疑を追及されるヒロインの回想に沿ってストーリーは進む。聴取は真夜中にはじまり、明け方に解決をみる。
メリハリに欠ける原作小説をうまく整理した、といえよう。
40年代ハリウッド型ノワールの規格だ。鏡に映る像、そして人物の影の、思わせぶりなショットの数かず。



しかし、この名作は、ケインが四苦八苦して隠そうと努めた(結果は、だらだらと冗長きわまる話に引き伸ばされただけ)俗悪さを、フィルム全体に露出してしまった。
つまり、ケインの最良の本質は、その臆面もない俗悪さ(ノワールといおうがハードボイルドといおうが同じこと)それのみにあるーーと、映像をもって完璧に証明してしまった。



エドマンド・ウィルソンのような碩学がケインに高評価を与えているのは、とんでもない勘違いなのである。
ケインの取り柄は俗悪にあり、それにしかない。
ウィルソン式の文学メガネがその不可思議な本質を視透せないことは致し方あるまい。
だが、作者のケイン自身、その曇って歪んだ文学メガネをもって自作を自己評価していたとすれば、これはあまり嗤えない笑劇だ。
小説『ミルドレッド・ピアース』には、もう少し寛容をもってたいしたほうがいい、ということか。


TV版の『ミルドレッド・ピアース 幸せの代償』 (2011 全5話)は未見。