2004年08月26日 『ヴィレッジ』を観たぞ
M・ナイト・シャマランの最新作『ヴィレッジ』を劇場試写で観てきた。
『シックス・センス』でびっくり仰天、『アンブレイカブル』でムムムと戸惑い、つづく『サイン』の大コケぶりに呆れ返った(あるいは激怒した)――というのが、このインド生まれの「21世紀のヒッチコック」への平均的な反応だったようだ。
こんどはどうかね。
その《地上の楽園》は、
奇妙な《掟》に縛られていた…。
――何故?
果たして何をやるのか。
監督および主演女優の舞台挨拶つきの、盛況なマスコミ試写であった。
感想をひとことでいうと――じつにまあ、強烈な寓話だ。
どこがどう寓話なのかは、ラストまで堪能してみて初めて感得できる。ホラーの進行で奇抜な共同体を描くというやり方は正攻法。これにラヴ・ストーリーをからませるんだが、となると、どんなドンデン返しになるのか予測がつかなくなる。
掟をめぐる仕掛けが割れてくる後半は、盲目の少女(役の上では大人だが)が怪異の森に彷徨うという冒険ファンタジーの定番で押していく。この人のドラマ作りには、奇をてらうところはあまりない。
結局、結末にいたって観客も「ザ・ヴィレッジ」の外側を観せてもらえるわけだが、これが、文字通りの「外」なのだ。
原タイトルにはついている「ザ」の意味が、これ以上ないくらいに雄弁に、ザザザッと立ち上がってくる。
それでいて、内も外もない、愛がすべてに打ち勝つという話にきっちり収まっているんだから。まあ、なんと臆面もないことで……。彼女は村を救ったわけではない。恋人を救うのが主で、その結果、村の未来もついでのように救った。村の未来を救うとは、村の「外」を救うことでもあるから……。
む、これ以上はバラせないか。
村を呪う恐怖は、ザザザと揺れる森の暗闇、ペキペキペキと木立ちが折れる軽金属音、そしてガォーッと吠える怪獣の咆哮、おなじみのジャジャーンと響く衝撃の効果音、などをもって迫ってくる。
一つひとつの要素としては、さして新味があるわけでもない。アンサンブルの手腕だ。
まあ、とにかく――宇宙人の来襲とかでなくて助かった。
終わってみれば、なんとなんと堂々のヒロイン・ストーリーなのだった。
これがデビュー作となるブライス・ダラス・ハワード。女優誕生の映画でもある。
ドラマの華はすべて彼女がさらってしまったようだ。まるでブライスのために全編が捧げられているといっても過言ではない。村の長老たち役のウィリアム・ハートやシガニー・ウィーバーはもちろん、寡黙な賢人(恋人)役を演じるホアキン・フェニックスも、兄弟殺しの聖者役を受け持つエイドリアン・ブロディも、みんな彼女の引き立て役といったところ。
何ともはや、贅沢三昧の配役だ。
要するに、こういうことか――。
これまでのシャマラン映画に不足だったのは女優、そうヒロインだったのだ。『サイン』の大空振りの真の要因もそこにあったとすれば納得がいく。
会場を出てみると、そこが『シックス・センス』を初めてロードショーで観た同じ映画館であったことに気づく。
ずいぶんな偶然であって、個人的には、映画鑑賞にも倍してスリリングな発見である。