30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。
1982年4月25日日曜 曇り
ウォーレン・ビーティ『レッズ』
有楽町
有楽町
ロシア十月革命がハリウッド史劇の題材になる! ほとんど信じられないことみたいに思われた。
蜃気楼のようなフィルムだった。
振り返ってみれば、冷戦時代も最後の十年にさしかかっていた。この作品ももまた過渡期の産物だったのかもしれない。
リードのロシア革命ドキュメントは文庫で手軽に読める。もちろん映画の内容とはあまり関連しない。
ビーティのジョン・リードとダイアン・キートンのルイズ・ブライアント。史実を脚色したメロドラマとわかっていて
も引きこまれる。ジャック・ニコルソンのユージン・オニールは適役ではあったけれど、いかんせんいくら話をこしらえても出場所がない。リードとオニールの
接点がごく限られていたのだから当然の結果だ。
「年上の愛人」メイベル・ダッジとのエピソードも割愛されたようだ。
レーニン、トロツキーに次ぐ革命政権のナンバー3、ジノヴィエフ役を作家のイェジー・コジンスキーが演じている。コジンスキーは数年後に派手なパフォーマンスで自殺した。
映画には実在する「歴史の証人たち」へのインタビューが挿入されている。ヘンリー・ミラーの分が印象に残る。例によってズレたことを喋っているのだが、とぼけた味わいがにじみ出ていた。死の直前ということもあったろう。