30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。
1982年6月5日土曜 晴れ
高橋伴明『TATTOOあり』
新宿
ピンクの星高橋伴明がATG配給の枠で初めて挑んだ一般映画。三菱銀行に人質をとって数十時間籠城した末、射殺された梅川昭男の半生を描く。
『復讐するは我にあり』よりもこじんまりしてキュート。その分、叙情に流れるところも多くあったようだ。
渡辺美佐子、下元史郎をはじめとする助演陣の多彩さが華だ。
併映は長崎俊一『九月の冗談クラブバンド』
日活ロマンポルノの勢いもあって、70年代以降の独立プロダクション系ピンク映画は低迷した印象が強い。足立正生も大和屋竺もすでに無く、ポスト若松の座は、高橋や中村幻児などの全共闘世代に移行していた。
そこに送られてきたATG映画は、何かの胎動を感じさせるものだった。
というか、個人的な意味での「日本映画の時代」が始まりかけていた。